TEL.03-3586-1522info@car-auc.jp

iQ、話題性は十分だったのに惜しくも人気車になれなかったクルマ

出典:TOYOTA
皆さんはトヨタのiQというクルマを覚えているでしょうか?「そんなのあったっけ?」などという人がいても不思議はありません。惜しくも人気車になれなかった個性抜群のコンパクトカーでした。
 
それまでのトヨタのコンパクトカーというと、どちらかといえばお手頃価格で、いわば廉価な乗用車的な位置づけのものばかりでした。これは車種ラインナップが多く、ヒエラルキー的に上級車種との差別化が求められるトヨタ車では当然のこと。でも、このiQはそんなヒエラルキーの外に位置し上質な作りとユニークなデザイン、そして画期的なコンセプトの元に生まれたクルマだったのです。過去形で書いているのは、ご察しの通りすでにラインナップ落ちをしているからです。
 
個人的にはデザインも個性的で、実車を見ると意外に魅力的なクルマだなと思っていたのですが、残念ながら市場ではあまり受け入れられなかったのです。ラインナップされていた期間でも実際に走っている姿を街中で見かける機会はほとんどありませんでした。
 
混雑した都市部ではそのコンパクトなボディは使いやすいものだったはずですし、それでいて4人が乗れる(無理矢理ですが)スペースを確保、加えて安物感のない所有感を満たしてくれるデザインとクオリティ、さらに軽量コンパクトで排気量も車格にあった1,000cc~1,300ccとちょうどいいもの。シティコミュータ―としては合理的な一台と思ったのですが…。残念です。
 
そんなiQですが、なくなってしまいましたが今一度見直してみてもいいのではないかと筆者は思っています。なにが画期的だったのか? そしてどうして人気車とならなかったのかが分かるかもしれません。
 
 

ライバルは人気車のスマート?いったい何が違っていたのか。

 
smart

(出典:TOYOTA)

 
トヨタiQ登場は2008年でした。センセーショナルに登場した割に販売台数はふるわず、しかしそれでも細々と生産は続き8年後の2016年に販売が終了しています。こうしてみると意外に長い期間ラインナップされていたのですね。それなのに街中でほとんど見かけなかったということは、その魅力があまり理解されず売れなかったという事です。クルマの出来の良し悪しは別としてカタログ落ちとなるのも仕方がなかったのでしょうか。
 
iQはトヨタが全く新しいクルマを目指して、「マイクロプレミアムカー」を掲げた新発想の一台でした。iQという車名はウィキペデイアによると、iQの「i」は「個性(individuality)」を表すと同時に、「革新(innovation)」と「知性(intelligence)」という意味をあわせもつ。また、「Q」は、「品質(quality)」を表現するとともに「立体的な(cubic)」という言葉の音と、新しい価値観とライフスタイルへの「きっかけ(cue)」という言葉に由来している。とのことです。
 
ライバル車はずばりスマート・フォーツークーペ!筆者もiQが発表された当時、発表会会場で実車を見て、言い方は悪いですが「トヨタはスマートをパクったな」と思ったのが正直なところです。
 
そのサイズやデザイン、コンセプトなど非常に似ていますし、iQがスマートを参考にしたのは間違いないでしょう。駆動方式(スマートはRRでiQはFF)や乗車定員(スマートは2人でiQは変則的な4人)が違うからライバルでない!とする向きもありますが、比較対象としてこの2台が並ぶのは間違いなく、またスマートという優れたひな形がなければトヨタ独自でこのようなユニークなコンセプトのクルマを生み出せたとも考えづらいです。ということで、個人的には間違いなくライバルといっていいと思っています。
 
ただし、スマートはモデルチェンジを重ね現行車としてラインナップが続いていますがiQは2016年に販売終了、絶版車となってしまいました。残念ながらスマートとライバル関係にはありましたが、その勝負に関しては明らかに負けてしまったわけですね。もちろんクルマの完成度で劣ったということでなく、多くの人に受け入れられたどうかという点でしかありませんので、オーナーの方は気を悪くしないでいただきたいです。
 
 

トヨタらしいそつのない完成度。しかし、ユーザーが求めたものは…。

 
022_o

(出典:TOYOTA)

 
iQの登場時の価格は140万円~160万円。当初は1,000ccエンジン搭載車しかなくグレードも3つのみとシンプルなものでした。そのサイズはというと。
全長2,985mm×全幅1,680mm×全高1,500mm。ホイールベース2,000mm。車両重量890kg
 
全長は軽自動車よりも40cm短く(軽自動車は3,400mm以下)で、幅は5ナンバーサイズほぼいっぱい。全高は1,500mmですから立体パーキングにも対応できる絶妙なサイズ。重量は今のトールワゴン型軽自動車よりも軽いものでした。
 
ちなみに同じ2007年に2代目へモデルチェンジしたスマートフォーツークーペのサイズはというと。
全長2,720mm×全幅1,560mm×全高1,540mm ・ホイールベース1,865mm。車両重量810kg。
 
ほんの少しiQよりも小さいですが、縦横比でみると非常に似通っています。価格は176万円~とiQよりも高かったのですがブランドイメージの違いからか注目度も高く、都市部では走っている姿を見かける機会も少なくありませんでした。つまりそれなりに売れていたということです。
 
寸詰まりの全長に高い全高、丸っこい個性的なデザインをもち合理的な小排気量エンジンと質感の高いインテリア…、と実に似ていますが一番の違いは、乗車定員。iQは大人3人+子供が1人が乗れるということを大きく打ち出していました。しかし、実際には後部座席はかなり窮屈で前席助手席側を変則的に運転席よりも前に配置することでなんとか大人一人が後席に座れるスペースを確保。運転席後ろの後席には子供ならに座れる程度のスペースしかなく本気で4人乗車をしようとするとかなりの窮屈感を強いられるというものでした。軽自動車よりも短い3m未満の全長で4人乗りとしたことはかなりに無理矢理なものであったのです。
 
ただ室内の横方向のスペースは十分余裕があり2人乗りとして使う分にはゆとりがあるものでした。2人乗車+緊急時にはもう一人乗ることができ、かつ手荷物を置くスペースがあるのですから、スマートよりも実用的であったという考え方もできますよね。
 
でも、だったらはじめから4人ないし5人乗りのもっとリーズナブルなハッチバックやセダンでいいんじゃないか…。と多くの人が思ったのかもしれません。
 
トヨタのコンパクトカーであれば比較されるのはどうしても同じトヨタのヴィッツやパッソ。iQはプレミアムコンパクトだからこれらとは違う! といわれてもやぱりトヨタ、メルセデスベンツのスマートとは違います。結果的に10年で累計販売数は3万台ほどで終了。ちなみに2016年の同じトヨタのコンパクトカー、ヴィッツの販売台数は7万台/年以上。10年売ってその半年分にも満たないということは、トヨタのコンパクトカーには個性よりも経済性が求められていたということなのでしょう。
 
ではライバルとなるスマートはどれだけ売れているのか? 国内累計台数に関してデータが見つからなかったのですが、2000年登場から現在までで3万台ほどと言われています。2017年のメルセデスベンツによるプレスリリースには、「2016年のスマート販売台数が過去最高の4,508台を記録」とあるので、だいたいこんなものでしょう。
 
この数字を見ると日本国内ではことさら売れているというわけでもないようです。ただやはり強烈に個性的なデザインが街中でも強い印象な上、iQよりも高価な輸入車ということを考えるとこの台数は十分な数字です。スマートはプレミアムなコンパクトというイメージは完全に確立しており今もラインナップされ、全世界では累計150万台を売り上げているというのですからさすがです。
 
 

そのコンセプトが理解されなかった。プレミアム感があればあるいは…

 
1280px-Aston_Martin_Cygnet_Gen1_000_2011-0000_frontright_2012-05-01_U

(このファイルはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 ライセンスのもとに利用を許諾されています。ファイル名:Aston Martin Cygnet Gen1 000 2011-0000 frontright 2012-05-01 U.jpg/投稿者:Detectandpreserve)

 
iQは個性的なエクステリアに小回りの効くコンパクトなサイズと短いホイールベース、燃費もよくインテリアも上質。2008年にはグッドデザイン賞と日本カーオブザイヤーを受賞するなど総じてその評価は高かったのですが、結果的にそれは人気に繋がりませんでした。
 
コンセプトは画期的でも実用性では中途半端。小回り抜群でも直進安定性あまり高くなく高速道路では落ち着きがない。インテリアは上質でも実質2人乗りで荷物はあまり積めない。価格はベーシックなコンパクトカーよりも高価なのに、それがあまり周囲には伝わらない。プレミアムカーとしてユーザーに認められていればあるいは違ったかもしれません。
 
2012年には、スーパーチャージャーを搭載した限定車iQ “GRMN Supercharger”を355万円で限定100台のみリリースしあっという間に完売しているので、もっとプレミアム感を出し、例えばレクサスチャンネルから高級コンパクトとして販売するなどすれば、もしかしたらもう少し注目を浴びることができたのでは…。などと想像もできます。
 
またユニークなものとして高級車ブランドのアストンマーチンからシグネットとしてiQをカスタマイズした車種が販売されたこともありました。その価格は驚きの475万円! アストンマーチンのお眼鏡にかなうくらいベースのポテンシャルは高かったのでしょう。
 
しかしiQはその志はとても高かったのですが、残念ながらトヨタ版スマートにはなれなかったのです。それでもその独自の魅力は決して色あせる物ではないと筆者は思っています。絶版となってしまいましたが、その完成度は決して低かったわけではありません。多くのユーザーのニーズにマッチしなかったというだけのこと。いずれこの稀少車iQは、時代が変わり再評価されるかもしれません。今iQに乗っている方がいらっしゃるなら、歴史に残る希少な一台のオーナーとして、是非今後も大切に乗り続けて欲しいですね。