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ターボ、スーパーチャージャーに続く新たな過給機“電動コンプレッサー”

ヨーロッパを発端に、今、世界的に普及が進んでいるのが「ダウンサイジングターボ」です。燃費に優れ環境負荷の小さなエンジンに過給機を加えてパワーを補い、大きなセダンやSUVにも十分なパワーユニット得るという流れはとても合理的なものですよね。
 
また、2017年からはじまるEUの排ガス規制、ユーロ6フェーズ2は、窒素酸化物の排出量の規制がより厳しくなるため、ヨーロッパで人気の高かったディーゼルエンジンでは対応が困難、ということもダウンサイジングターボが注目される要因となっています。ハイブリッドやEVなどと合わせて、今後は環境性能に優れたパワーユニットとして世界的にさらに普及が進むのはおそらく間違いないでしょう。
 
 

ダウンサイジングターボの欠点を解消する新しい技術

 
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ハイブリッドの技術で世界に先んじた日本の自動車メーカーですが、そのせいでダウンサイジングターボ市場への参入は遅れています。しかし、日本以外では正直ハイブリッド車はあまり人気がないのが現状であり、EV化も進んではいますが、バッテリーのコストや航続距離、充電時間など技術的に満足いくまでは今しばらく時間がかかると言われています。となれば国産メーカーも今後はダウンサイジングターボのラインナップを強化せざる得ないというのが当然の流れでしょう。
 
ただ、ダウンサイジングターボには欠点があります。それは、ターボラグです。排気圧が低いスタート時や低速時には過給効果が得にくいという特性から、渋滞やゴー・ストップの多い日本の交通環境にはあまり適していないとも言われているのです。もちろん小型のターボを使いエンジンが低回転から過給が効く様にするなどの工夫や、ターボそのものの技術も向上しているので以前のように露骨なターボラグはありませんが、それでも構造上多少は残ってしまいます。
 
ではそのことでやがて普及にブレーキがかかるのでしょうか?しかし、じつはそういった不満を解消してくれる新たな技術がすでに誕生しています。それが従来のターボの欠点ともいえるターボラグを解消するできるという「電動コンプレッサー」です。
 
この電動コンプレッサー、すでにアウディなどには導入されているのですが、新たにメルセデスベンツの新しいSクラスにも採用になった、というニュースが、先日米ボルグワーナー社がプレスリリースとして発信されたのです。そのリリースがこちらです。
 
この電動コンプレッサーは、新しいSクラスの直列6気筒ガソリンエンジンに搭載される予定です。ベンツのSクラスといえば大排気量のV8エンジンが人気であり、それこそが主力というイメージがありますが、このボルグワーナー製電動コンプレッサー「eBooster」と同社のターボチャージャーを組み合わせて新しい直列6気筒3,000ccエンジンに搭載すると、そんな大排気量のV8エンジンに匹敵するポテンシャルが得られるとされています。それでいて、燃費は5~10%改善可能なうえ、低速トルクが向上し、なおかつターボラグを感じることがなくなるとされています。すごいですよね。
 
では、この電動コンプレッサーはいったいどういうモノなのでしょうか?と、気になる所ですが、まずは肝心のその前にターボやスーパーチャージャーなどの従来からある過給機のほうの仕組みから簡単に説明していきましょう。
 
 

ターボとスーパーチャージャー メリットとデメリット

 
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ターボもスーパーチャージャーも共にコンプレッサーであり、空気を圧縮して大気圧よりも高圧な状態でシリンダーに送る過給機です。圧縮された空気は本来の排気量以上の混合気(燃料と空気を混合した気体)となり、より多くの酸素と燃料をシリンダー内で燃焼させることができるので、排気量をアップしたのと同様に大きなパワーを得ることができるというわけです。
 
乱暴にいうと例えば1,000CCのエンジンに1,500CC分の混合気を扇風機で強制的に押し込んでやり、それを燃やしているといえばいいでしょうか。
 
ターボとスーパーチャージャーでは、空気を圧縮するためのコンプレッサーのその作動方法に一番の違いがあります。ターボの場合は本来捨てられていた排気ガスの圧力を利用してタービンを回し、その力でコンプレッサーを動かして空気を圧縮、シリンダーに送っています。
 
対してスーパーチャージャーは、エンジンの駆動力の一部をベルトやギアで取り出し、連結されたコンプレッサーを機械的に回転させて、空気を圧縮してシリンダーに送っています。共に空気を圧縮するという機能は同じなのですが一方は捨てられている排気ガスの圧力を無駄なく利用し、もう一方はエンジンの力の一部を利用しているということですね。
 
双方にはメリットとデメリットがあります。まずターボの場合のメリットは、捨てるはずの排気ガスの力を使っているのでエンジン自体に負担をかけることなく効率的にパワーを得ることできるという事。
 
対してデメリットはタービンを回転させるために必要な排気ガスの圧力が高まらないと、効果的に過給ができないということ。
ですので、スタート時や低速走行時など、エンジンの回転数が低いシーンでは排気の圧力も低く十分な効果を得られないのです。これがいわゆるターボラグ。エンジンの回転数が上がるまではアクセルを踏んでもパワーがあがらず加速してくれない上、ある程度エンジンの回転数が上がると今度は急激にパワーを発揮し加速し出すというものです。
 
こういった特性のターボ車を昔はどっかんターボ(ある回転数から急激にターボが効くため)などと言っていましたが、最近のターボ車ではそこまで極端なターボラグはありません。とはいえそのメカニズム上ターボラグは完全になくすことはできないのです。
 
続いてスーパーチャージャーの場合は、エンジンの回転する力でコンプレッサーを回し、圧縮した空気を強制的にエンジンに送りこんでいます。ターボと違い、エンジンの持ち力の一部をコンプレッサーの作動に割いているのでエンジンの回転数が低い状態でも十分に空気を圧縮することが可能です。ですから停止状態からのスタートでも、アクセルを踏んだ瞬間から十分に過給をすることが可能で、ターボのようなターボラグは発生しないのです。
 
デメリットは、先ほど述べたようにエンジンのパワーの一部を割いてコンプレッサーを回すのでエンジンのパワーロスやエンジンが高回転になった際に無駄な負荷となります。
高速回転になればなるほどそのロスが大きくなり、高速回転を使用するハイスピード域ではその過給のメリットが相殺されてしまい、パワーアップの効果が得にくいということですね。
 
双方のメリット活かしデメリットを相殺するために低回転ではスーパーチャージャー、高速回転ではターボを使用するツインチャージャーもかつてはありました(日本では、バブル期以前に日産がマーチスーパーターボなるクルマを発売しています。)が、構造が複雑になる上コストもかかるということもあって一部を除いて、現在はほぼそういったものはありません。
 
 

電動コンプレッサーの仕組みとは そして、その大きなメリットとは

ここでようやく電動コンプレッサーの仕組みを紹介しましょう。長々と引っ張りましたがようはターボやスーパーチャージャーと同じ過給機です。ものすごく大雑把にいってしまうと電気で動作するターボ(スーパーチャージャー?)といったところでしょうか。
 
スーパーチャージャーやターボとの一番の違いは駆動方法にバッテリーとモーターの力を利用しているということですね。2016年にアウディが同社のSQ7に搭載したのが世界初といわれています。アウディの場合はディーゼルエンジンに搭載された二つのターボチャージャーを、排気圧が低い状態であってもモーターの力であらかじめ回転させておくことで、ターボラグを発生させず過給することができるという仕組みです。
 
電動コンプッサーのメリットの一つは、このようにターボの欠点であるターボラグを解消できるということです。バッテリーとモーターでコンプレッサーを作動させ空気を圧縮するので、エンジンの回転数や排気圧とは無関係にいつでも自在に過給でき、低回転域や再加速の際にも十分な過給効果が得られるのです。
 
また電気でコントロールするのでレスポンスにも優れ、プログラムによる緻密なコントロールも可能です。省燃費向け、スポーツ走行向けなど様々なタイプに簡単にセッティングを変更することもできるでしょう。
 
さらにスーパーチャージャーのように駆動のためのエンジンパワーロスもありませんし、ターボのように排ガスの熱の影響も受けません。装置そのものもコンパクトで配管やベルトとの接続といったメカニズム的な制約も少ないので搭載する場所の自由度が高くコンパクトカーなどの狭いエンジンルームでも利用しやすいというのも大きな特長です。
 
このように非常にメリットの大きい電動コンプレッサーですが、現時点ではこれだけで搭載されているクルマはありません。ターボなどと組み合わせて低回転時は電動コンプレッサー、高回転時にはターボと使い分けることで効率よくエネルギーを利用しながら、優れた走行性能を得る、といった目的で使用されています。
 
また電動コンプレッサーのモーター部に発電機を組み込み、電動コンプレッサーが作動していない際には捨てられている排気ガスの排気圧を使って発電を行いバッテリーに回収することも可能といいますから、ハイブリッドカーなどにも非常に相性のよいアイテムといえるでしょうね。
 
電動コンプレッサーは、欧米メーカーが現在は先んじていますが、すでに日本でもその研究は進んでいます。先日もチューニングパーツメーカーとして名高いHKSが、電動スーパーチャージャーとして電動コンプレッサーの開発を進めている、とアナウンスしていました。やはりこういったハイテクシステムの開発は、日本メーカーが得意とするところ。遠くない将来、国産車にもより高性能となって搭載が実現するのは間違いないでしょう。