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いまさらながらブレーキはどうやってクルマを止めている?

運転席の足元を見てください。そこには2つの(マニュアルなら3つですが)のペダルがありますよね。クルマの走る、止まるといった基本的な動きをコントロールするのがこの二つの大事なペダルです。
 
まず右にあるのがアクセル。これを踏めばフューエルインジェクションシステム(古い車ならキャブレター)のスロットルバルブが開き、空気とガソリンの噴射量が増えて混合気がシリンダー内に供給されます。そして、エンジンの回転数が上昇して車速が上がるのです。燃料と空気をたくさん燃やして大きな力を得る。自転車でいえばペダルを踏み込む力を増すのと同じなので、そのメカニズムは正確に理解していなくてもなんとなくは分っていますよね。
 
では、もう一つの、足元の真ん中らへんにあるペダルです。これでコントロールするのはもちろんフットブレーキですよね。踏むとブレーキが効き、クルマを減速させ、停止することができます。でも、なんでこのペダルを踏むと車速が落ちてクルマは停止するのでしょうか?「そんなのブレーキディスクにパッドを押しつけて、その摩擦抵抗で速度を落としているに決まっているでしょ」。そうですね、ほぼ正解です。
 
 

フットブレーキはエネルギー変換装置?

 
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でも、もっと詳しくいうと、走行するクルマの運動エネルギーを、ディスクとパッドの摩擦(ディスクブレーキの場合)によって摩擦熱にして大気中に放出(捨てている)することでクルマを減速しているのです。それがクルマに使用されている一般的なディスクブレーキでありドラムブレーキです。基本的な仕組みは自転車のブレーキなども同じですね。つまり、運動エネルギーを、熱エネルギーに変換する装置がブレーキといえるわけです。
 
また、最近のハイブリッドカーやEVは、回生ブレーキでも減速を行っています。とはいってもこれは回生ブレーキというブレーキがクルマに搭載されているわけではありませんので誤解のないように。
 
どういったものかというと、ハイブリッドカーやEVには電気モーターが搭載されていますよね。このモーターは電気エネルギーを運動エネルギーに変換して駆動力を発生しています。でも、逆にそのモーターを外部からの力で回すと、モーターは発電機になり電気が発生します。これは、誰しも小学校の時に習いましたよね。
 
この仕組みをブレーキに使用しているのが回生ブレーキです。モーターへの電気の供給をやめ、回転するタイヤの力でモーターを回してクルマの運動エネルギーを電気エネルギーに変換するのですが、タイヤがモーター(発電機)を回そうとする力に対しての抵抗力を、クルマの減速につかっているということです。そしてそこで発生した電気はキャパシターやバッテリーなどに蓄えて、再度モーターを回すための電気エネルギーとしてリサイクル(再利用)しています。賢い仕組みですね。
 
フットブレーキも、回生ブレーキも運動エネルギーを別のエネルギーに変えることで、クルマの推進する力を奪って(減速させて)いる、ということは同じ。つまりブレーキはエネルギー変換装置なのです。ブレーキのコト、このようにあらためて考えてみると、ちょっと認識がかわりませんか?
 
 

ディスクブレーキとドラムブレーキどう違う

 
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クルマやバイクなどのブレーキシステムの代表といえばディスクブレーキです。円盤状のブレーキディスクと、ブレーキパッドを油圧でディスク押し付けるブレーキキャリパーで構成されています。その仕組みは、ドライバーがブレーキペダルを踏むと、その力がいったんブースター(倍力装置)に伝わり、そこで力が増幅されマスターシリンダーから油圧(大型のトラックなどの場合は圧縮空気を使う場合もあり)が発生。ブレーキキャリパーのピストンに圧力が伝わりブレーキパッドがディスクに強く押し付けられます。するとディスクとパッドの間で強い摩擦がおこり、熱が発生、そこでエネルギーが熱に変換されてクルマが減速するという仕組みです。
 
もう一つ代表的なブレーキがドラムブレーキです。こちらはドラムと呼ばれるクッキーの缶のような円筒状の金属ケースの中に、ホイールシリンダーやブレーキシューなどのメカニズムが密封されています。作動の基本的な仕組みはおおよそディスクブレーキと変わりません。
 
ペダルを踏み油圧が発生。ドラム内のホイールシリンダーに圧力が伝わりピストンの力でブレーキシューをドラムの内側の壁(ディスクブレーキのディスクに相当)に押しつけます。この力で摩擦を発生させクルマを減速します。
 
なんとなく、ディスクブレーキのほうが、効きが良いというイメージがありますが、メカニズムからくる制動力に関しては実はこの二つに大きな差はありません。ドラムとディスク、パッドとシューそれぞれが同じ摩擦力であれば、同様に効くはずです。
 
但し、ドラムブレーキはメカニズムが密封されたドラムの中にあり熱がこもりやすい(放熱に不利)という欠点があります。そのため現在のクルマでは特に負荷のかかる前輪側には、ほぼ必ずディスクブレーキが採用されています。しかし、共に運動エネルギーを熱に変換している、という点では大きく変わりません。
 
ポイントはやはり熱。ブレーキの摩擦熱は大気中に放出されると前述しましたが、例えば峠の下り坂などで、繰り返しフットブレーキを使い続けると、その放熱が間に合わなくなることがあるのです。では、熱変換装置であるブレーキで運動エネルギーから変換された熱の放熱が間に合わなくなると、どうなってしまうのでしょう。
 
 

下り坂でクルマが止まらない!?フットブレーキの使い過ぎに注意

 
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激しいブレーキングを繰り返すことでブレーキの放熱が追い付かなくなってしまうと、制動力が一時的に大きく低下してしまうことがあります。その原因は熱で、この熱のせいで、「フェード」や「ベーパーロック」が起こり、ブレーキが効かなく(効きづらく)なってしまうのです。
 
ブレーキパッドやブレーキシューには、素材に応じた許容温度というのがあります。下り坂でフットブレーキを必要以上に使用したり、サーキット走行で急ブレーキを繰り返すと、激しい摩擦熱によってその許容温度を超えてしまうことがあるのです。
 
するとパッドやシューに使用されている摩擦材が分解、ガス化してしまい、ブレーキローターやドラムの間にガスの膜を作ります。そしてその膜が潤滑剤となりパッドやシューの摩擦係数を下げ、一時的に制動力が奪ってしまうのです。そうなったらいくらブレーキペダルを強く踏みこんでもクルマは減速できず、止まってくれません。これがフェードと呼ばれるものです。
 
また、同じようにフットブレーキの使い過ぎで、ブレーキが過熱し、ブレーキフルード(ブレーキオイル)にまでその熱が伝わると、フルードが沸騰して、気泡が発生してしまう場合あります。そうなると、ペダルを踏んでも、ピストンは気泡が潰すだけになり、油圧がキチンと伝わらずパッドやシューには圧力が伝わりません。そのためにブレーキが効かなくなってしまうのです。これがベーパーロックです。
 
 

エンジンブレーキ?それってうちのクルマにもついている?

こういったトラブルを防ぐにはどうすればいいか?免許を持っている人なら教習所や更新の際の免許センターで習いましたよね。エンジンブレーキを併用するのです。
 
まさか「クルマを買った時にエンジンブレーキなんてつけなかったよ!」なんて人はいないとおもいますが、一応説明します。別にエンジンブレーキという装置がクルマに装備されているわけではありません。簡単にいえば、アクセルを戻したときにクルマにかかるエンジンからの抵抗力をエンジンブレーキとよんでいるのです。
 
エンジンは、通常燃料と空気が供給されて、はじめて回転が上昇し駆動力を発生させます。しかし走行中にアクセルを閉じると、エンジンの内部ではエンジンを回転させる力が働かなく(アイドリングはしますが)なります。
 
しかし、その状態でもクルマは走り続けている。すると自分では回ろうとしないエンジンを、タイヤの回転で強引に回わしている状態になります。それが大きな抵抗力となってクルマにブレーキがかかった状態になる、それがエンジンブレーキです。同じ速度なら、よりたくさんエンジンを回転させなくてはいけない低いギアに入っているほどその抵抗が大きくなります。
 
だから、峠道の長い下り坂などではシフトダウンをしてエンジンブレーキを強く効かせるのです。エンジンブレーキなら、フェードもベーパーロックも起きません。効果的にエンジンブレーキを使用しつつ、フットブレーキで速度をコントロールすれば、安全に、長い下り坂を走行することができるというわけです。
 
今時のブレーキはとても優秀なので、めったなことでは致命的なフェードやバーパーロックは起こりません。しかし、なんとなく効きが悪くなってきたな、という時にはその兆候かも知れませんのでご注意ください。
 
ブレーキをかけるとクルマは減速し止まる。当たり前でいて、意外に知らないその仕組みのこと、多少はご理解いただけたでしょうか。ホイールの内側に隠れているので普段あまり意識しないかもしれませんが、エンジンと共に重要なメカニズムの一つ。たまには気を掛けて、メンテナンスにも力を入れてください。なんといってもあなたの安全運転をサポートしてくれる大切なものなのですから。