TEL.03-3586-1522info@car-auc.jp

冬の必需品スタッドレスはなぜグリップするのか?

もはや雪国だけの常識ではありません。季節が冬に移り変りはじめたのを察知したら、早めにスタッドレスタイヤに交換しましょう。たとえ雪があまり降らない地域に住んでいたしても、雪は決して他人事ではありません。
 
もたもたしていると、いきなり冬空に変り雪が降りはじめ、気が付いたら道路が一面真っ白に…。なんてことは筆者にも身に覚えがあります。そして、急いでカー用品店やガソリンスタンドにタイヤを交換しに駆け込もうと行動を開始した、時にはすでに遅し!店頭はスタッドレスへの交換や、タイヤチェーンを求める人で大行列ができていた。なんてこと、ありがちですよね。
 
突然の雪にパニックを起こす都会の風景はもはや冬の風物詩。まいどのことなので学習すればいいことなのに、毎冬繰り返される光景です。でも、賢く早めに行動を起こせばそんなパニックに巻き込まれることはありません。
 
立ち往生する夏タイヤを履いたクルマを横目に、スタッドレスタイヤを履いた愛車ですいすいと走り抜けてゆく、ちょっとした優越感に浸れますよね。また、出先で帰宅困難となった家族を迎えに行けば、きっと感謝されるはずです。(関連記事 – 危険がいっぱい!雪道ドライブのトラブルの回避、対処方法とは
 
 

スパイクタイヤの禁止がきっかけでスタッドレスタイヤが急速に普及

 
8d2379a56b5834686b2cd2c62ec18ff3_s
 
雪道やアイスバーンでも路面をとらえて、安全でスムーズな走行ができるスタッドレスタイヤ。そんな、スタッドレスタイヤが本格的に日本に普及し始めたのは意外に最近のこと、1991年以降です。
 
もちろん、それ以前からスタッドレスタイヤは存在していました。しかし、もともとあったスパイクタイヤのほうがグリップ力に優れていたこともあって、日本ではあまり普及していませんでした。思いのほか歴史は浅いのです。
 
でもなぜ、この年を境に普及が加速したのか?その理由は「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が1991年4月に施行されたためです。
 
この法律によって一部の地域を除き、原則的には舗装路でのスパイクタイヤの使用が禁止となりました。禁止の理由は雪のない舗装路を、金属製の鋲が埋め込まれたスパイクタイヤで走るとアスファルトを削り、道路を傷めるうえに粉塵を撒き散らしてしまうためです。
 
粉塵は目や鼻、のどなどの病気の原因になったり、喘息を悪化させるなどの健康被害を発生させます。当然使い続けるわけには行かないので禁止となったわけですね。
 
とはいえ雪道でも走行に支障がないタイヤは必要です。そこでスパイクタイヤに変るものとして急激に普及したのが、鋲(スタッド)の(レス)ない、タイヤ、つまりスタッドレスタイヤというわけです。
 
ところで、スパイクタイヤが雪道でグリップするのはスパイクが雪や氷に食い込むから、というのは分かります。
 
しかし、なんでスパイクのないスタッドレスタイヤが同じように雪道やアイスバーンでしっかりとグリップできるのでしょうか?スタッドレスタイヤの恩恵を十分に受けていても、グリップするその理屈は知らない方のほうが多いですよね。そこで今回はそのグリップの秘密を簡単に説明してみましょう。
 
 

トレッドで圧縮した雪をけりだしてグリップ力を得ているスタッドレス

では、まずスタッドレスタイヤと夏用タイヤのトレッドパターンを比べてみてください。
beer
 
パッと見はあまり変わりがないように見えるかもしれません。しかし、よく見ると、スタッドレスタイヤのほうは、排水用の縦(回転方向)のミゾに加えて、非常に深い横(回転方向に対しての交差方向)のミゾが刻まれているのが見て取れると思います。この深いミゾが鍵なのです。
 
柔らかな雪の上を、この深いミゾが刻まれたスタッドレスタイヤで走行します。すると、この深いミゾが雪を捉えます。そしてミゾの中では捉えた雪がぎゅっと圧縮され、雪柱状になります。そして路面には、その圧縮された雪柱の凸凹ができることになります。
 
雪合戦のときの雪球を思い出してください。雪はそのままではもろいものですが、圧縮されると簡単には崩れませんよね。そんな踏み固められた雪柱と、タイヤの横ミゾが強い抵抗生み出し、その柱を蹴り出すようにして強力なグリップ力を生み出すのです。このミゾが雪を噛み踏み固めることによる抵抗を「雪柱せん断力」と呼びます。
 
圧縮された雪はタイヤの回転とともに後方に排出され、再度路面の雪をつかみ圧縮…、という形で雪上のグリップを得ているのです。
 
つまりはこのミゾが大きいほどに雪上で高いグリップ効果が得られるということ。であるならば農作業用のトラクターのタイヤのように、大きなリブのある、見るからに凸凹な形状にしてしまえばもっと効果的なのでは?そう考えますよね。確かにそれはそうです。実際スタッドレスタイヤではない雪上用タイヤにスノータイヤというものがあります。こちらのようなものです。
 
主にトラックやバス、フォークリフトなどの作業用のクルマなどに用意されているものですが、見るからに凸凹が大きく抵抗がありそう。これならば、雪上であれば強力なグリップを発揮することできます。
 
しかし、見ての通り極端に凸凹なタイヤですから舗装路では路面との接触面積が小さくなり効果的なグリップ力が発揮できません。それに凸凹ですから乗り心地も悪いうえに騒音も大きい。つまり雪上専用のタイヤであり、乗用車に使うのには無理があるということ。
 
それに、雪上ではなく、アイスバーンなどの氷上ではグリップ力は発揮できません。なぜなら路面との密着面積が小さい上に、スタッドレスタイヤが持っている除水効果などをもっていないためです。
 
 

サイプが水を取り除くことで路面との密着度を高めてグリップする

 
2e6c55c5d600414845bf2392779febc3_s
 
スタッドレスタイヤは前述した、雪柱せん断力に加えて、トレッド面の無数の小さな切れ込みである「サイプ」によってもグリップを得ています。
 
この細かなミゾであるサイプが「除水効果」をもっているのです。スタッドレスタイヤは雪上だけでなく、アイスバーンなどの氷上でもグリップ力を発揮しなくてはなりません。でないと路面状況がコロコロとかわる日本のウインターロードを安心して走れませんようね。
 
アイスバーンがすべるのは、溶けた氷が路面にミクロの水の膜を作るため。氷は溶けなければ滑ることはありません。
 
例えば、冷蔵庫のフリーザーから取り出したばかりの氷を、手で直接触れたことを思い出してください。最初は指先にくっついて離れませんよね。でも、しばらくして表面が溶け出すと、滑るようになる。
 
同じようにアイスバーンでも、気温が極端に低ければ氷が溶けることなくタイヤは滑らないのです。タイヤの圧力や摩擦によって表面が溶け出し水の膜ができるから滑ってしまうのです。
 
そこで登場するのがスタッドレスタイヤのサイプの細かなミゾ。このミゾが毛細管現象で表面の水を吸い上げることで、氷上を覆う水の膜を除去(つまり除水効果)するのです。
 
その効果によりタイヤをアイスバーンの路面に密着させ、しっかり密着することで摩擦が大きくなるのでグリップ力が発揮される。
加えて、サイプやブロックのエッジ部分がアイスバーンの表面を直接引っかくことでもグリップを得ているのです。
 
さらに、最新のスタッドレスタイヤは低温でもしなやかなゴムをコンパウンドに使用し、路面への密着度を上げたり、ゴムの内部に気泡を作りそこに水を吸い取り、排出するなど様々な技術が投入されています。ほかにも、アスファルトの路面よりも柔らかく、氷よりも硬いクルミなどを配合して路面を引っかく力を得るというものもあります。
 
このような技術に加え、メーカーがごとに様々な工夫を凝らしてかつてのスパイクタイヤにも匹敵する優れた雪上、氷上グリップ性能を得ているというわけなのです。
 
 

スタッドレスタイヤの慣らしや磨耗のチェックにも注意を払おう

スタッドレスタイヤがグリップする秘密は、これでなんとなく分かっていただけたでしょうか?理屈が分かった上で運転をするほうがなんとなく安心感も得られるのではないでしょうか。
 
また、スタッドレスタイヤのトレッドのミゾや、サイプの重要性も分かってもらえたはず。様々な技術が複合的にはたくことで冬道のグリップ力を得ているのですから、磨耗したり、経年でゴムが硬くなったスタッドレスは本来の性能が発揮できないというのも理解できると思います。
 
そのためスタッドレスタイヤは夏タイヤ以上にコンディションのチェックがかかせません。磨耗度合いが分かるプラットホームを見て、ミゾの深さが新品時の50%未満になっていないかをまずチェックしましょう。50%未満になっていたら、冬用タイヤとしては使用NGです。
 
また、ゴムが硬くなっていないかなども、シーズン前にキチンと確認しておきましょう。ミゾが残っていてもゴムのしなやかさが失われていたら前述したような除水効果や路面への密着効果が得られません。交換するのが懸命ですね。
 
スタッドレスタイヤを新品に交換した際にも気をつけることがあります。それは慣らし運転です。新品のスタッドレスタイヤでもグリップ力はある程度発揮できますが、表面の薄いゴムの膜をはがす、皮むき・慣らし運転をしておくと本来の性能が発揮されます。表面の油分も取れ、ゴムの薄い膜で覆われていたサイプやエッジが露出するからです。
 
やり方は簡単。乾いた舗装路を100km程度走っておけば良いだけです。スタッドレスタイヤはただ交換すればいいだけではありません。コンディションのチェックを行い、新品ならしっかりと慣らし運転をする。準備を万全にして、来るべきウインタードライブに備えましょう。